※先天性女体化、おまけにサスコが痴漢にあっちゃう話です。大丈夫な方のみどうぞ…









俺、うずまきナルトにはうちはサスケという幼なじみがいた。

成績優秀にしてスポーツ万能、おまけに容姿端麗という非の打ち所のないサスケは学園では密かなアイドル的存在で、すれ違えば男子のほとんどが振り返るような奴だった。整った顔立ち、涼やかな目元にスッと通った鼻筋、氷のようにクールな横顔、学校中のどこを探したってこれに並ぶ美少女はいない。

けれどもナルトだけは知っている、サスケはその辺の男よりもよっぽど男勝りで、まったくかわいげのない奴なのだ。親同士が仲良しだから付き合いは毛も生えていないガキの頃から、ど突き合い罵り合いして育ったナルトとサスケは小さい頃はまるで男同士のライバルみたいな関係だった。それでも中学に上がる頃にはアホみたいな喧嘩っ早さもなくなり、今ではサスケはナルトの一番の親友だ。男と女で親友なんてそんな馬鹿なと思うかもしれないけど、十年来の付き合いは男女の隔たりなんて曖昧にして、ナルトにとって一番話しやすく誰よりも理解し合っているのは間違いなくサスケだった。恐らくサスケだってそうなはずだ。女友達というポジションでもない、サスケはその性格と付き合いの長さも相俟ってかどちらかといえば男友達に近くて、とにかく一緒に帰ったりだの教科書の貸し借りだのがなんのトキメキもなく行えて、なおかつ思ったことを好き勝手言い合って後腐れないような女の子はサスケだけだった。

そんなナルトを周囲の友人達はバカだアホだと罵った。サスケはモテないけどモテる。あの強気な性格と容姿に怯まずに向かっていくような果敢な男なんてそうそういないし、何よりサスケ自身がまったく男に関心がないから本人はまったく気付いていないけれども、とにかくサスケは人気があるのだ。あの綺麗な顔は男女問わず校内の噂の的で、それこそ自覚していないのはサスケくらいのものだった。あのうちはサスケと少しでもいいから会話したいと陰ながら見つめている男がたくさんいるのを、ナルトは知っている(そういう奴らは絶対に、ナルト経由でサスケとお近づきになろうとするのだ)。そんな彼らからしたら、サスケが男子の中で唯一心を許していつも一緒にいるナルトの立場は、死ぬほど羨ましいものらしい。

ナルトはといえば、ふぅん、程度に彼らの話を聞いていた。サスケは確かにきれーな顔はしている、けれどもそれに対して特にどうと思ったことはなかった。中身を知り尽くしているからときめきも何も覚えない、第一サスケの顔なんか小学校で見飽きたのだ。ナルトからすれば周りの男子たちの反応は、男友達のような親友が男に騒がれている、なんともむず痒いもので、正直に言ってしまえば理解できなかった。サスケのことよく知らねー奴等が勝手に騒いでんな、その程度の面白くなさは感じるけれども、だからって彼らに対し優越感を覚えるようなことは間違ってもなかった。

そんなナルトを周囲の友人たちはバカだアホだと罵った。俺がお前ならそんなおいしいポジションを無駄にしねぇのに、あぁ神様、どうかこのアホと俺を交換してください、と誰かは言った。お前いつになったら気付くんだ、と呆れたようにシカマルは言った(なにを、と聞いたけれど答えてはくれなかった)。
それでもナルトは理解できなかった。だってだって、サスケは俺にとっては幼なじみの男みたいな女の子なのだ。あんな男勝りな奴にときめくわけがない。

ただ、性別とか関係なく友達なんだ。

そのはずだったのに。



「……っ、」



なんで、と思った。

その日ナルトは寝坊して、電車の時間ギリギリに家を飛び出した。ブザーが鳴ってドアが閉まるのとほぼ同時に満員電車に駆け込んで、一息つく間もなく景色が動き出す。
きょろきょろと辺りを見渡して、この電車に乗っているはずのサスケを探す。いつもは通学路かこのホームで必ず一緒になるサスケも、今日は先に電車に乗ってしまったようだった。身動きの取りづらい満員電車の中、首だけを動かして周りを見渡すと、ちょうど斜め向かいのドア近くに見間違うはずのない黒髪の後ろ頭を見つけた。あ、と思い人垣におしくらまんじゅうをされながら近付いて、ニ、三人の隙間からサスケの身体が見え始めた、その時。

異変に気付いた。

サスケは俯き頑なに足元を睨んでいた。たまにわずかな身動ぎをして、その度に震えるように身体を強張らせた。揺れた黒髪の隙間から覗いた耳がやけに赤かった。俯いた横顔、目元は前髪に隠れて見えないけれども、噛み締めた唇からわずかに吐息が漏れる。

人垣の隙間からなんとか見えたサスケの下半身、そのスカートのあたりに太くて汚ならしい男の手があった。






(110902)
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